2022年1月25日火曜日

製品と商品の違い

消費者が購入するモノやサービスを指して、「製品」と言ったり「商品」と言ったりするケースがあります。一見どちらでもいいように感じるかもしれませんが、実は二つの言葉には適切に使い分けをしなくてはならない意味の違いがあるのです。どのような場合に「製品」が使われ、「商品」が用いられるのか、例文も交えながら確認していきます。

「製品」「商品」の違い・概要

「製品」も「商品」も、消費者を対象として用いられる言葉という点では共通しています。しかしそれぞれが意味している内容は同じではありません。両者の違いを一言でいえば、「製品」が、原料を加工し製造したモノを指すのに対して、「商品」とは、販売・購入することを目的として調達されたモノやサービス全般を指している、という点にあります。衣服を例にとれば、製造工場で縫製が完了して服として出来上がっている状態は「製品」ですが、出荷されて販売ベースに乗った時点で「商品」となります。

「製品」「商品」の意味・読み方は?

「製品」の読み方は「せいひん」です。「商品」は「しょうひん」と読みます。

「製品」は、金属製品、プラスティック製品、石油製品など、加工製造する材料によって様々な種類が存在します。製品といえば、このように原材料に視点を合わせたものを連想するのが一般的ですが、別の視点で製品を捉える場合もあります。たとえばメーカーは製品を製造する中で、原料を一から加工して完成品を作っているわけではありません。よそから「他社製品」を購入し、これを製造し直して「自社製品」とするわけです。これは「製品」を製造プロセスから見た捉え方です。このほか、店頭に並べられる完成品ではないものの、製品の一部として販売することが可能な状態のものも、製品として成立しています。これらは「半製品」と呼ばれるもので、それ自体が一つの製品といえるものです。

いっぽう「商品」とは、販売・購入を目的として調達されたモノやサービス全般を指して言います。売り買いしようと思えば道端の雑草でも商品にすることができます。裏返して言えば、そのもの自体に大きな価値があり、いくらでも料金は払うのでぜひ譲ってほしいと言われるものでも、売る気がなければ商品にはならないということです。売り買いの対象は形のあるモノに限る必要はありません。無形のサービスであっても商品として成立します。

「製品」「商品」の使い方、使い分けは?

「製品」と「商品」の使い分けでまず注意しなくてはならないのは、それが加工製造の工程を経たものかどうか、という点です。このプロセスを踏んでいないものは「製品」と呼ぶことができません。たとえば採れたての魚や収穫したてのコメ、野菜などを販売するときには、「製品」ではなく「商品」と言うべきです。いっぽうで缶詰にした魚や、漬物にされた野菜などは「製品」と言うことができます。同様に、金融商品や保険商品など、加工製造とは無縁のサービスも「製品」ではなく「商品」と呼びます。

同じ対象物でも、それが持つ創造的な価値に重点を置くのか、経済的な価値に重点を置くのかという視点の違いで「製品」「商品」を使い分けた方が良い場合もあります。たとえばブランド品の衣服を例にとってみます。これを「商品」と言うときは、生産、管理、流通、販売などといった経済活動の中で、価値を生み出すことが期待されるモノとしての側面が強調されます。金額的に高い、安い、といった経済的な優劣を指す価値判断です。いっぽう衣服を「製品」と言った場合、金銭的な価値に加えてブランディングの側面が強調されるという意味を持ちます。「あのブランドのスーツはアッパークラスのステータスだ」など、消費者がその商品に抱くイメージも織り込んで話題にする場合には「製品」を使う方がなじみます。

このほかにも簡単な使い分けとして、実際に店頭に並んで販売されているものは売買の価値をやり取りする最前線にあるモノですから、「製品」ではなく「商品」と呼ぶほうが適切だということも挙げられます。さらに、その商品を店員さんがお客さんに説明する際には、「製品」ではなく、「商品」とか「お品」という言い方のほうがなじみます。「こちらの製品は、今回限りの販売でございます」というより「こちらの商品(お品)は、今回限りの販売でございます」というほうが自然に聞こえるのも、店頭という場所が、モノの持つ経済的な側面を強調するのにふさわしいエリアであるからといえます。

「製品」「商品」の用例・例文

「製品」を使った例文には次のようなものがあります。
・製品に使用されている繊維ごとの、その製品全体に対する質量割合を百分率(%)で表示する方法。(消費者庁「繊維製品の表示について」)
・もしも需要者のほうで粗製品を相手にしなければ、そんなものは自然に影を隠してしまうだろう。 (寺田寅彦 「断水の日」)

いっぽう「商品」には次のような例文が見られます。
・商品先物取引とは、将来の一定期日に一定の商品を売買することを約束して、その価格を現時点で決める取引のことです。(農林水産省「商品先物取引」)
・どの商店も小綺麗にさっぱりして、磨いた硝子の飾窓には、様々の珍しい商品が並んでいた。( 萩原朔太郎 「猫町」)