2022年1月25日火曜日

元旦と元日の違い

「元旦」と「元日」は、いずれも1年の始まりを表す単語として知られています。しかし、「元旦」と「元日」は、厳密には異なる意味を持つ単語であることに注意が必要です。両者にはどのような意味やニュアンスの違いがあるのでしょうか。今回は、「元旦」と「元日」の違いや使い分けについて、具体的な用例を交えながら解説します。

「元旦」「元日」の違い・概要

「元旦」と「元日」の違いは、1年の始まりの中でもどの範囲を指すか、という違いです。具体的には、「元旦」は「1月1日の午前中」を指す言葉であるのに対して、「元日」は「1月1日そのもの」を指す言葉となっています。つまり、「元日の午前中」こそがまさしく「元旦」ということになるのです。1月1日の午後を指して「元旦の午後」と言ってしまうと、意味が矛盾してしまうため本来は誤った使い方となります。「元日」が指す範囲の中に「元旦」が指す範囲が含まれている、と覚えておくのがよいでしょう。

「元旦」「元日」の意味・読み方は?

「元旦」は、「がんたん」と読みます。「物事の初め」や「根本」を意味する「元」に、「日の出」や「夜明け」を表す「旦」を組み合わせることで、「1年の始まりの朝」という意味の熟語になります。「旦」の字は、地平線から太陽が出てきていることを視覚的に表現するため、「日」の下に地平線を表す横棒が引かれているのです。このことから、「元旦」は「1月1日の朝」、ひいては「1月1日の午前中」を指すようになりました。「元旦の朝」は重複表現となるため注意が必要です。

一方、「元日」の読みは「がんじつ」です。「元旦」同様に「物事の初め」を意味する「元」と、「一日」「日付」を意味する「日」を組み合わせた熟語であり、「1年の始まりの日」、すなわち「1月1日」を意味します。「元日」は日付そのものを指しますから、1月1日そのものが「元日」となります。つまり、「元日の朝」「元日の午前中」は、実質的には「元旦」と同義です。カレンダーでも、1月1日は「元日」と表記されています。「元旦」を1月1日そのものを指す意味合いで使う人もいますが、本来は誤った用法であることに注意しましょう。

「元旦」「元日」の使い方、使い分けは?

「元旦」と「元日」の使い分けは至ってシンプルで、「1月1日の午前中」のみを指す場合は「元旦」を、「1月1日そのもの」を指す場合は「元日」をそれぞれ使います。例えば、1月1日の朝の挨拶は「元旦の挨拶」と表現できます。一方、1月1日の運勢を占う場合は、占う対象が1月1日全体となりますから、「元日の運勢」と表現することになります。運勢以外にも、1月1日全体を対象として指す際は全て「元日の天気」「元日のニュース」などのように、「元日」を使用して表現します。一方、1月1日午前中のみを対象として指す場合は、「元旦の天気」「元旦のニュース」など、「元旦の~」の形で表現可能です。

また、年賀状では「元旦」の表記が一般的です。1月1日に間に合うように投函された年賀状は午前中に配達されるため、「元旦」と表記して新年の挨拶を行います。もちろん、1月1日に届くように投函しているならば、「元日」を使っても問題はありません。ちなみに、他の人からの年賀状を受けて返事を出すなど、1月1日に間に合わないことがわかりきっている場合は、「元旦」や「元日」を使わずに、1月全体を指す表現である「正月」や「初春」を使うのが良いでしょう。ただし、「元旦」や「元日」が年賀状の決まり文句として捉えられている側面もあり、遅くとも松の内(1月7日~1月15日)までに届くものには「元旦」や「元日」を使用するという人も少なくありません。

1月1日に放映される正月特番は、「元旦スペシャル」や「元日スペシャル」と銘打たれていることも少なくありません。放送時間が午前中スタートの場合は「元旦スペシャル」、午後や夜に放送開始する番組は「元日スペシャル」という使い分けが行われていることが多いですが、厳密な使い分けをしていないケースもあります。

「元旦」「元日」の用例・例文

以下では、「元旦」や「元日」を用いた用例や例文を記載します。使用例を通して、「元旦」と「元日」をどう使い分けるかを確かめてみましょう。

「初夢は、元日の夜に見る夢のことである」
初夢を見るのは1月1日の夜です。このため、午前中のみを指す「元旦」は使えません。1月1日全体を指す「元日」を使用するのが好ましいケースと言えるでしょう。

「一年の計は元旦にあり」
慣用句のひとつで、1年の計画は1月1日の午前中に立てるのが好ましいという意味です。また、物事を始めるに当たっては初めの計画が肝心である、という意味合いも持っています。1年の一番最初はまさに「1月1日の午前中」、即ち「元旦」となります。「一年の計は元旦にあり」と言いながら午後に計画を立てても、タイミングとしては遅すぎるため注意しましょう。

「年賀状を元日に届けるには、12月25日までに送りましょう」
この文章で注意すべきは「元日に届ける」という表現です。「元旦に届ける」ではないため、期日として指定された12月25日に年賀状を投函したとしても、必ずしも年賀状が元旦、即ち1月1日の午前中に届くことは保証されていない、という裏の意味が込められています。期限を説明する上で「元旦」ではなく「元日」を使用している場合、「元旦」に間に合う保証をしていない点に注意が必要です。