2022年1月25日火曜日

辞職と退職の違い

辞職は「自分の意思で仕事を辞めること」を指します。退職は、仕事を辞めること全般を指します。「退職」の概念の中に「辞職」も含まれているようなイメージで捉えるとよいでしょう。

自己都合や勧告、定年や懲戒など、いかなる理由であれ、企業や組織から離れる際には退職という言葉を使います。

辞職についても「辞める理由」は特に問われません。本人に問題があってもなくても、自ら仕事を離れるときは辞職といいます。

ちなみに「辞任」は、「任務(役職)を辞する」ことを意味します。仕事そのものを辞めて職場から去る「辞職」とは意味合いが異なります。

「辞職」「退職」の意味・読み方は?

辞職は「じしょく」と読みます。決められた手続きを踏まえ、その人が就いていた職を辞めようとすることが辞職です。仮に雇い主が合意していなくても、従業員が自分から辞めようとする場合は辞職と表現します。ちなみに、雇い主と本人が合意のうえで辞めるのは「自己都合退職」であり、辞職とはいいません。なお、役職の高い人間が組織を離れるときは、どのような理由でも辞職ということがあります。辞職をするためには「辞表」が提出され、上司に受け入れられてようやく手続きが成立する仕組みです。

一方、退職は「たいしょく」と読みます。退職は、ある人が職場を離れることです。単に、役職が変わったり、転勤したりするだけでは退職と呼びません。組織から名前がなくなり、居場所を失うことが退職です。有名な例としては、「定年退職」が挙げられるでしょう。これは定年を迎えて、自動的に退職へと向かうことです。仮に本人の意思とは関係なく仕事を辞めた場合でも、現場から離れた以上は退職と表現されます。そのほか、リストラで解雇に追い込まれたような状況でも、退職という形容がふさわしいでしょう。

「辞職」「退職」の使い方、使い分けは?

使い分けの重要なポイントは、「あらかじめ想定された辞め方をしているかどうか」です。辞職の場合、契約条件や社則で決まっていた流れではありません。本人の気持ちが変わったり、問題が起こったりして、辞めざるをえなくなるのが辞職です。ただし、本人の意思とは関係なく、周囲から辞めるように仕向けられるのは辞職といいません。その場合は「退職勧告」「解雇」といった表現がなされるでしょう。辞職に対し、退職は最初から想定された事態です。定年や契約満了は、労働条件の中に組み込まれていた事項だといえるでしょう。こうした規則に従い、時期を迎えた人が職場を去っていくのは退職と呼ばれます。

次に、「形式的に、自ら職を辞するとき」も辞職が使われてきました。たとえば、社長や幹部などの目上の人間が問題を起こしたとします。そのことで本人が辞めなければならなくなったとしても、堂々と理由を述べるのは屈辱的だといえます。組織の面子を保つためにも、「上の人間に見逃せない問題があって辞めてもらった」という事実はぼかさなくてはなりません。このようなときにはあえて辞職という形をとり、真相が後世に伝わりにくくします。もしも辞めさせられる理由がはっきりしており、本人が強制的に追い出されたのなら退職と表現されます。

「本人の立場」もまた、辞職と退職の基準になるでしょう。原則的に、辞職とは課長以上の地位がある人について使われてきました。もちろん、本人の意思で職場を離れることが大前提です。つまり、辞職とは「責任の大きい立場の人が、自ら職を辞する」ときに使う言葉だといえます。一方、役職や肩書のない人が組織を離れる際には、辞表と呼ばれません。本人の意思の有無とは無関係に、退職と呼ばれます。

「辞職」「退職」の用例・例文

辞職も退職も、それぞれ「辞職する」「退職する」といった形で、動詞にもなります。たとえば、「あの課長は相次ぐプライベートの問題により辞職した」「そろそろ退職する年齢が近づき、少しずつ引き継ぎ作業を進めている」といった使われ方をされてきました。なお、退職を使った有名な用例に「退職金」があります。これは、退職にともない、勤め先から支払われる金銭のことです。ただし、「辞職金」という言葉は使われていません。なぜなら、辞職とは自分の意思で職場を離れることなので、所得保障である退職金は支払われないからです。

辞職を願う書類が「辞表」と呼ばれるのに対し、退職の場合は「退職願い」といわれてきました。辞表と退職願いは、どのような役職の人間か提出するかで使い分けられています。多くの企業では、課長以上なら辞表、それよりも下の役職は退職願いと形容されています。辞職は役職が高い人だけにあてはまる言葉であり、「政策の失敗を受けて内閣総辞職が決まった」といった場合に使われてきました。