2022年1月25日火曜日

戦うと闘うの違い

目の前の相手を乗り越えようとすることは、「戦う」「闘う」と表現されます。いずれも意味が似ているので、同じ言葉だと思われていることも少なくありません。しかし、実際は細かい定義が異なるので、正確に使い分けたいところです。この記事では、「戦う」と「闘う」の違いやそれぞれの意味、使い分けのポイントなどを解説していきます。

「戦う」「闘う」の違い・概要

そもそも「戦う」とは「勝敗を決するために行動する」という意味を持っています。戦争やスポーツ、ゲームなどで他者と争うときに用いられるのは「戦う」です。「戦う」では、試合や競争に勝利することが大きな目的となっています。それに対し、「闘う」は困難や課題を克服するための行動です。目的が達成されたとしても、「勝利」と表現されることは一般的ではありません。「闘う」には明確な勝敗がない場合もあります。「戦う」と比べると、対象が概念的、抽象的になることが多いのも「闘う」の特徴です。

「戦う」「闘う」の意味・読み方は?

まず、「戦う」「闘う」のいずれも「たたかう」と読みます。2つを合わせて「戦闘」という言葉があるように、意味そのものは非常によく似ています。「対象の人、物を制するために努力する」という点では共通しているでしょう。その中でも、「戦う」はルールやシチュエーションが限られているときに使用されてきました。スポーツやゲームには原則があり、参加者はその範囲内で相手に勝利しようと行動します。暴力や武力が用いられるときにも、「戦う」がふさわしいといえるでしょう。

一方、「闘う」があてはまる状況は、具体的な敵を目にすることができないときです。組織や理念、病気などを克服しようとする際に、「闘う」は用いられます。これらのシーンでは、対象を目視できるわけではないからです。「闘う」では基本的に、暴力や武力をともなうことは多くありません。そのかわり、政治的な手段や言葉を使って、状況を好転させようとします。病気の治療のように、専門的な知識を使って問題解決に挑むことも「闘う」と表現します。

「戦う」「闘う」の使い方、使い分けは?

優劣や勝敗が決まる場では、「戦う」を使うのが適切です。「戦う」には能力や技術を駆使して、相手を上回ろうとするとの意味があります。典型的なのは、スポーツの試合でしょう。スポーツ選手は相手に勝利するため努力しています。あるいは、点数で他の参加者を超えようとしています。スポーツははっきりと優劣や勝利があるので、「戦う」という言葉が用いられてきました。また、国家間の軍事力による衝突を「戦争」と呼ぶように、集団同士の争いにも「戦う」が使われます。

一方、成功や失敗が生まれる場では、「闘う」が適しているといえるでしょう。あるいは、問題を解決、改善させようと注力する場合にも「闘う」が使われます。すなわち、優劣や勝敗を決めにくいシチュエーションでは「闘う」が用いられてきました。たとえば、政治運動ではある団体が、組織や国家に主張を通そうと努めます。ただ、主張が通ったとしても、その団体が組織や国家に勝利したわけではありません。単に、その案件については主張が認められただけです。こうしたケースでは、「闘う」が用いられています。

「戦う」と「闘う」の使い分けとしては、「対象に実体があるかどうか」も重要です。「戦う」では、相手をはっきりと確認できます。スポーツやゲームには対戦相手がいますし、戦争でも敵国を認識できるでしょう。さらに、勝利が決定づけられる手段や条件も明確になっています。それに対し、「闘う」ときの相手は明確な形があると限りません。病気やイデオロギーには実体がなく、克服するための条件も提示されていないといえます。また、「闘う」は精神論になっていることも少なくありません。自分の欠点を自覚し、乗り越えようとするような状況では「闘う」が使われています。

誘惑を退けようと頑張る際にも「闘う」が用いられます。睡魔や食欲といった生理現象には実体がないので「戦う」はあてはまりません。そのかわり、「睡魔と闘った」のように表現されます。

「戦う」「闘う」の用例・例文

武力による衝突、試合形式の争いでは「戦う」が使われてきました。「対戦」「戦場」といった単語でも、「戦う」の漢字が採用されています。例文としては、「この戦いに勝てば、ボクシングの世界王者になれる」「激しく戦った両軍には多くの犠牲が出た」などが挙げられます。また、暴力や武力を用いるわけではなくても、勝敗が決するときには「戦う」が用いられてきました。「プロジェクトの方向性について、メンバー同士で意見を戦わせる」といった用例が代表的です。

「戦う」と違い、整った形式がない争いでは「闘う」がふさわしいといえます。たとえば、武力に優れた人間を「戦士」と呼ぶのに対し、信念が強い人間は「闘士」と表現されてきました。このように、概念的な争いにおいては「闘う」を使うのが賢明です。例文としては「ストライキが終了し、長い闘いが終わった」「病と闘った末、なんとか回復することができた」などが挙げられます。