2022年1月25日火曜日

代表取締役と社長の違い

「社長」と「代表取締役」の大きな違いは、法律的な根拠に基づいているかどうかという点にあります。企業における代表取締役は会社法によって権限が認められている最高責任者ですが、社長という役職には法律的な根拠はありません。また、代表取締役は1つの企業において複数人存在するケースがありますが、社長と呼ばれるポストに就くのは1人に限られるのが一般的です。代表取締役には社外との取り引きに関する単独での決定権が認められている一方、社長の権限はあくまで社内での意思決定に留まります。

「社長」「代表取締役」の意味・読み方は?

「社長」は「しゃちょう」と読み、会社を管理運営する長である事を意味しています。社長は商習慣上企業をまとめるトップが必要になった流れから自然発生的に生まれた役職であり、社内の統制および最終的な意思決定が主な役目です。企業の事業活動における様々な基準を取りまとめた会社法では、社長という役職について具体的な権限は明記されていません。また、社長と代表取締役は兼任可能であるため「代表取締役社長」という肩書きを持つ経営者も多いので留意しておきましょう。

「代表取締役」の読みは「だいひょうとりしまりやく」であり、会社法によって様々な権限が認められています。例えば社内業務において株主総会や取締役会での決定を実行出来る「執行権」、企業の代表として裁判をはじめとする社外的な手続きを行う事が出来る「代表権」などです。代表取締役の任期は法律で定められている訳ではありませんが、一般的には2年を一区切りとしている企業が多いと言われています。

また、株式会社は原則として会社法によって「取締役」の設置が義務付けられています。代表取締役とは取締役3人以上から構成される「取締役会」から選出される代表者なのです。代表取締役には人数制限が設けられていないため、大企業になると複数の人間が代表取締役に就任しているケースも珍しくありません。取締役会については企業規模によって設置しなくても良い場合がありますが、その場合でも最低1人の取締役を任命する必要があるので注意しましょう。

「社長」「代表取締役」の使い方、使い分けは?

「社長」と「代表取締役」は認められている権限に明確な違いがあるため、行使する場面や相手によって使い分けられるのが一般的です。例えば社内業務の統括責任者という立場にある社長は、新規プロジェクトの立ち上げおよびその進捗管理についてしばしば肩書きが用いられます。会社の経営を支える経理の各種承認業務や、人事における評価・表彰も社長の肩書きで行われるケースが多いです。ただし、社長が持つこうした権限のすべてを社長自身が直接行使する事は現実的ではありません。規模の大きい企業であれば従業員数や管理すべき工数も膨大になるため、社長1人ではすべてを把握出来ないのです。そのため、一般的に社長が持つ社内業務に関する執行権限は経理部・人事部など様々な部門に委任されます。

一方、代表取締役には前述の通り「執行権」と「代表権」という2つの大きな権限が法的な根拠に基づいて認められています。代表取締役の権限が行使される場面は、主に「自身の意思以外から影響を受けて社内でのアクションを行う際」「社外に対して手続きをとる際」などです。例えば執行権は社内業務において大きな影響力を持つ権限ですが、原則として行使出来るのは株主総会や取締役会で決定された内容に限定されています。理屈の上では社長が独断で社内の意思決定が可能であるのに対して、代表取締役はあくまで最終的なGoサインを出すのが役割なのです。

代表権は自社に関わる裁判や、資金調達のための借り入れを行う際に代表取締役が行使する権限となっています。裁判所や金融機関といった社外組織との関わりが必要になるため、こうした手続きは対外的責任者である代表取締役の役割です。社長という役職はあくまで企業がそれぞれ独自に定めた社内での役職であり、社内業務における統制権限が集約されています。これに対して代表取締役は会社法に基づいた法的な権限を持つ役職なのです。

「社長」「代表取締役」の用例・例文

社内業務において多くの権限を持つ社長という肩書きは、従業員間の会話で登場する事も珍しくありません。例えば「この資料をまとめたら、社長に承認をもらっておいてください」「社長直々の指示なので、各自早急に取り掛かるように」といった具合です。一方、代表取締役は企業が外部組織と関わる際によく登場する肩書きとなっています。そのため「本日のセミナーには講師として株式会社○○の代表取締役、××さんをお招きしました」「今回の株主総会では代表取締役の選出が大きな議題となった」というような用例が挙げられるでしょう。