2022年1月25日火曜日

創業と設立の違い

会社を立ち上げるときに「創業」「設立」といった表現をします。いずれも似た意味なので、何気なく使っている人は少なくありません。しかし、実際には細かい定義が異なります。それぞれを使用するシチュエーションについて、意識するようにしましょう。この記事では、創業と設立の違いや意味、使い分けの基準などを解説します。

「創業」「設立」の違い・概要

どちらも、新しく会社や団体を作るときに使われている言葉です。両者の違いを挙げるとすれば、創業は「営利目的の事業を始める」際に用いられます。たとえば、会社や店舗は営利目的なので創業にあてはまります。しかし、ボランティア団体やサークルは非営利目的であり、原則的に創業とは呼びません。一方、設立の意味は法務局に登記し、法人を作ることです。法人の目的は関係なく、宗教法人でも財団法人でも等しく創業と表現されます。仮に「会社設立日」と書かれていれば、それは登記がなされた日付を意味します。

「創業」「設立」の意味・読み方は?

創業は「そうぎょう」と読みます。創業は事業を新しく始めることであり、その形態は問われません。会社や店舗、個人事業主などに対しても同じように使われる言葉です。なお、創業では法人登記を行ったかどうかは関係ありません。そのため、創業の基準は事業主の自己申告になっているケースが多いといえます。老舗であれば「創業100年」「明治時代に創業」といった表現がなされているものの、その時期に正式な法人登記がなされていたわけではありません。店舗の創始者や経営者が、「今日から事業を始める」と決めた日が創業日とみなされます。

一方、設立は「せつりつ」と読みます。設立は法人登記を行うことであり、法人以外の団体について使われることはありません。たとえば、法律では「組合契約の規定による組合」「匿名組合契約の規定による匿名組合」などは、法人に含まれないとしています。つまり、これらの組合を立ち上げる際には設立といいません。「結成」「設置」といった表現が適切でしょう。また、創業日と設立日が異なるケースもあります。法人登記の概念がなかった頃に創業した老舗などは、後年になってから設立日を迎えることもありえます。

「創業」「設立」の使い方、使い分けは?

使い分けの最大のポイントは、「法人登記をしているかどうか」です。法人登記をしていてもしていなくても、創業という言葉は使えます。しかし、設立と表現できるのは、法人登記がなされている場合のみです。そのため、設立は団体や組織でなくてはなりません。個人事業主やフリーランスが「設立」と使うのは間違いです。それに対して、創業はあくまでも「営利活動を始めること」を意味しています。組織に属していない個人であっても、営利活動を始める際には創業とする場合があります。

次に、書類上の正確性の有無も使い分けの基準になるでしょう。創業日は本人の記憶や記録にしか残されていない可能性があります。有名な会社、店舗であっても、創業日の裏付けがとれていないケースは珍しくありません。経営者の自己申告や伝承によって、創業日が決められていることもあるのです。しかし、設立は法人登記という手続きに、日付が残されています。設立の日付は揺らぎようがなく、誤って伝えられることもありません。すなわち、設立の方が創業よりも、書類上の正確性がある概念だといえます。

そのほか、創業や設立を使うときには、「誰による行為だったか」を意識しましょう。なぜなら、創業と設立が同じ人によるとは限らないからです。仮に、大正時代にAさんが魚を売り始めたとします。その場合、Aさんが創始者です。Aさんの事業はどんどん拡大し、昭和になってから有名な店舗になりました。そこで、法人登記をしようとする動きが出てきます。ここで主体となり、登記を行ったのはBさんです。つまり、Bさんが設立者です。創業者と設立者が変わる場合は、それぞれの呼び名を正しく使い分けなくてはなりません。創業と設立の定義を踏まえながら、あらかじめ確認しておきたいところです。

「創業」「設立」の用例・例文

設立に比べると、創業の定義はやや曖昧です。店舗の場合、開店日を創業日と同じにしていることもあれば、開店準備の段階で創業とみなしていることもあります。そのため、創業はさまざまな文脈で使われる言葉だといえるでしょう。例文としては、「創業100周年に向けて、我が社では大々的なキャンペーンを企画している」「この店は祖父が汗水たらして創業した」などが挙げられます。

一方、設立は創業よりも厳密な定義を持つ言葉です。法人登記を済ませていなければ「設立した」とはいえません。「設立~周年」のような書き方をするときは、法人登記からどれくらい経ったかを表してきました。例文としては、「念願だった株式会社を設立し、私はとても満足している」「社団法人の設立に向けて尽力した」などが挙げられます。なお、ある会社が新しく子会社や新事業を立ち上げるときも、別に法人登記が必要になります。その際も、設立という言葉が用いられるでしょう。