2022年1月25日火曜日

趣旨と主旨の違い

「しゅし」という熟語は、漢字で表すと「趣旨」と「主旨」の2通りが存在します。いずれも日常生活の中でよく使われる熟語ですが、いざとなると、どのように使い分ければよいのか迷ってしまう人も多いはずです。そこで、「趣旨」と「主旨」の違いを知ることで、どのような場面においても正しく使い分けができるように、言葉の意味や用法などについて詳しく解説していきましょう。

「趣旨」「主旨」の違い・概要

「趣旨」と「主旨」の違いは、それぞれの熟語の1文字目に使われている漢字の意味を考えれば明確です。「趣旨」の「趣」には心の向かうところ、考え、意向といった意味があり、熟語全体としては「物事を行う理由や目的」を表します。一方、「主旨」の「主」には1番大切なこと、中心になっていることなどの意味があり、熟語全体としては「文章や話の中心となる事柄」を表します。つまり、「趣旨」は複数存在する多様性が認められるのに対し、「主旨」はただ一つの事柄を指していることに大きな違いがあるのです。

「趣旨」「主旨」の意味・読み方は?

では、「趣旨」と「主旨」のそれぞれの意味について、もう少し深く掘り下げていきましょう。

「趣旨」は「しゅし」と読み、ある事を行う中での基になっている考えや狙いを意味しています。例えば、文章の「趣旨」であれば、筆者が文章全体の中で書き表そうとしている内容や、書くに至った考えのことなどを指します。また、話の「趣旨」であれば、話をしていることの目的や真意を表していて、何のための話であるのか、言おうとしていることはどんなことかという意味合いを含んだ言葉となるのです。「趣旨」に置き換えることができる類語には「論旨」「趣意」「作意」「目的」などがあげられ、相手にわかってほしいという伝える側の気持ちも込められた熟語であると言えるでしょう。

「主旨」も「趣旨」と同じく「しゅし」と読み、文章や話の中で内容の中心となるもののことを表します。一見「趣旨」と似かよっているようにも思われますが、重要なのは「主旨」には目的の意味が含まれないという点です。つまり、「主旨」は「要点」や「主題」と同じような意味で使われる熟語で、あくまでも物事の核となる部分となる一つの事柄を指していると言えます。

「趣旨」「主旨」の使い方、使い分けは?

「趣旨」と「主旨」は読み方が全く同じである上に、2つの熟語は類語として位置づけられていて、それぞれが表している意味もそう遠くはありません。その証拠に英語表現においては「趣旨」と「主旨」を分ける英単語は存在せず、「meaninng」や「signification」などでひとくくりに表すことができます。しかし、日本の文化では、「趣旨」と「主旨」の微妙な意味の違いやニュアンスを考えて、日常生活やビジネスシーンにおいても適切に使い分けることが必要です。

「趣旨」と「主旨」を正しく使い分けるためのポイントとしては、まず「しゅし」が複数あるのか、それとも1つなのかを見極めることです。「趣旨」は理由や目的に該当するので、1つの文章や話の中に同時にいくつか存在していている場合もあります。しかし、「主旨」はあくまでも中心のものであり、1番大切なことに限られているので、1つの事柄であることが一般的です。次にポイントとなるのは、「しゅし」が目的や狙いといった物事の本質を深く表しているかどうかという点です。考えや計画の中で何を言おうとしているのか、なにが目的なのかといった理念や理想などを含むのであれば「趣旨」、含まないのであれば「主旨」となるので覚えておくとよいでしょう。

また、どうしても「趣旨」と「主旨」のどちらを使ったらいいのか迷って決められないという場面においては、「趣旨」を選択しておくのが無難です。先に述べたとおり、「趣旨」と「主旨」は類語の関係にありますが、「趣旨」の方がより幅広く多様な意味を含んでいる熟語となります。そのため、「主旨」のかわりに「趣旨」が使われても日本語の間違いにはなりません。そのため、「しゅし」の表記を「趣旨」で統一しているメディアも多く、「主旨」より「趣旨」の方が熟語として使われる頻度も高くなっています。

「趣旨」「主旨」の用例・例文

「趣旨」「主旨」の用例・例文には次のようなものがあります。

・以上は私が国策研究会の求に応じて、世界新秩序の問題について話した所の趣旨である。( 西田幾多郎 『世界新秩序の原理』)
・十二月五日『東京新聞』に総司令部の人権擁護班長ガートスタイナー氏が人権宣言の趣旨について語っていた。( 宮本百合子 『世界は求めている、平和を!』)
・朝倉先生は、塾生たちが広間に集まると、簡単に「探検」の主旨を説明しただけで、さっそくそれにとりかからせた。(下村湖人『次郎物語』)
・私の書いているその評論の全主旨はプロレタリア文学の存在否定でない。( 宮本百合子 『プロレタリア文学の存在』)

・この会議を行う趣旨は、担当者同士の顔合わせにあります。
・この度の会社設立についての趣旨について、文書でご説明しています。
・質問の趣旨はよくわかりましたので、お答えしましょう。

・長時間に及ぶプレゼンテーションだったが、結局、主旨があまり伝わらなかった。
・このスピーチの主旨は環境問題です。
・話の主旨を忘れないようにメモに書きとめておくとよいでしょう。