2022年1月25日火曜日

合同会社と株式会社の違い

ニュースや新聞などを見ていると「合同会社」「株式会社」といった言葉を時おり目にします。しかし会社の仕組みは普段の生活には馴染みがないため、きちんとした意味を知る機会は少ないものです。そこでこの記事では「合同会社」「株式会社」という2つの言葉の意味の違いや使い分け方、また具体的な用例について説明していきます。

「合同会社」「株式会社」の違い・概要

合同会社と株式会社はどちらも会社法によって定められた会社の種類を指しますが、その2つの違いは「会社の所有者が誰であるか」にあります。合同会社は会社の所有者が経営者と一致しているのに対し、株式会社では会社の所有者は株主です。株式会社は株式を利用して広く資金調達を行うことができるため一般的に認知度が高く、多くの資金を使った会社経営が可能です。一方で合同会社は株主総会の開催や決算公表を行う必要がないなど自由度の高い経営が可能で、かつ個人で事業を行う場合よりも税制面での節約ができるという利点があります。

「合同会社」「株式会社」の意味・読み方は?

合同会社は「ごうどうがいしゃ」と読みます。合同とは「独立する2つ以上のものが集まって1つにまとまること」を意味するため、独立する個人が集まって出資し会社を立ち上げる様子から「合同会社」と名付けられたと考えられます。ただし、合同会社は代表1人でも設立が可能です。合同会社は2006年に施行された会社法で新しく設けられた会社形態であるため、1893年に初めて商法に基づいて設立された株式会社と比較すると新しい概念と言えます。

また、合同会社と同様に会社の所有者が経営者である会社形態として「合名会社」「合資会社」があります。これら3つをあわせて「持分会社」と言いますが、このうち合同会社だけの特徴として社員の全員が有限責任社員であるという点が挙げられます。有限責任とは、会社の経営に関する損失に対する責任が出資額を限度とすることを意味します。例えば会社の経営がうまくいかず倒産してしまったとしても、出資額以上の債権者に対する負債を負うことはありません。一方で合名会社の社員は社員全員が無限責任社員であり、合資会社は一部の社員を無限責任社員として設立する必要があります。

株式会社は「かぶしきがいしゃ」と読みます。株式とは会社の所有権・経営権など株主としての権利をまとめたものを指し、一般にこれを一定数に分割したものと引き換えに資金を調達することで設立された会社を株式会社と言います。つまり株式会社の所有権・経営権は株主にあります。株式は分割されているため必ずしも株主一人が全権限を有することは少ないですが、株式の過半数を所有している場合は会社に関する多くの決議権を持つことができます。よって一般的に株式の過半数は会社の経営陣が保有し、それ以外の株式で資金調達を行います。

「合同会社」「株式会社」の使い方・使い分けは?

合同会社・株式会社は、会社の形態の違いによって区別されます。株式会社は株式による資金調達という他の会社形態にない大きな特徴があるため、株式を発行している会社かどうかで使い分けることが可能です。

またこれらの言葉は、その会社がどの会社形態で設立されているのかを示すために社名の前または後ろに配置して使う言葉でもあります。これは会社法第六条により「会社は、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の種類に沿って、それぞれその社名の中に株式会社、合名会社、合資会社または合同会社という文字を使用しなければならない。」と定められているためです。例えば代表的な合同会社として「Apple Japan合同会社」「グーグル合同会社」「合同会社西友」、また代表的な株式会社として「株式会社NTTドコモ」「アマゾンジャパン株式会社」「任天堂株式会社」などが挙げられますが、いずれも社名の前または後ろに会社形態を表す「合同会社」「株式会社」を付与しています。

また、特に株式会社においては社名の前に「株式会社」が付与された会社を「前株」、社名の後ろに付与された会社を「後株」と呼ぶことがあります。前後どちらに付与するかは法律によって定められていないため、会社の設立者が好みによって決めることができます。一般的に前株の会社は株式会社であることをアピールできるため企業イメージをよく見せることができ、後株の会社は社名が最初に来るため社名を認知してもらいやすく老舗ブランドが社名をアピールしやすいというメリットがあります。また数は少ないですが、「データプロセッシング株式会社ランドスケイプ」など社名の中間に付与した「中株」の会社も存在します。

「合同会社」「株式会社」の用例・例文

合同会社・株式会社は会社法によって定められた語であるため、会社法の中に数多く使用されています。例えば、以下のような条文があります。

・合名会社、合資会社又は合同会社を設立するためには、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。(会社法 第五百七十五条)
・株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。(会社法 第二十六条)

また一般に日常生活の中では会社の形態を意識する必要はあまりないため、会話文の中では以下のように意図して社名をそのまま発言する際に用いられます。

・君は、わざわざ、印半纏しるしばんてんを裏がえしに着ているが、僕には、その半纏の裏の襟えりに、どんな文字が染め抜かれて在るか、それさえ、ちゃんとわかっているのだ。言ってあげようか。今金酒造株式会社。どうだい、おどろいたか。(太宰治 『春の盗賊』)