2022年1月25日火曜日

制作と作成の違い

同じ「モノを作る」という意味を持つ単語でありながら、「制作」と「作成」では使う場面・意味が少しずつ異なります。ここではこの2つの言葉の意味・概念を理解し、その特徴を踏まえた上で両者の違いを見ていきましょう。加えて「制作」と「作成」を用いる際の使い分け方について、またこの2つを用いた文章例も紹介します。

「制作」「作成」の違い・概要

「制作」と「作成」の違いは、作るという動作の「対象となるモノ」です。両者ともに「モノを作る」という意味を含んでいる点では共通していますが、それぞれ作る対象物は異なります。映画や絵画・楽曲などの創作活動に用いられるのが「制作」であり、文字や記号を書いて文書や計画書などを作り上げる際に用いられるのが「作成」です。作る対象が芸術作品であれば「制作」、議事録や報告書などの書類であれば「作成」が用いられます。

「制作」「作成」の意味・読み方は?

「制作」は、映画・絵画など芸術作品を創作するという意味を含む単語です。読み方は「せいさく」であり、芸術作品・創作物を作る行為そのものに加えて、創作物を作る人(職業・役割)を指すこともあります。動詞である「する」と組み合わせて、作品を創造することを「制作する」というように表現することが可能です。制作の「制」の字には、形を作り整えるという意味合いが含まれています。頭に描いた構想を具現化するための設計図を作り、それを加工し組み立てるまでの過程、すなわち創作活動の一連の流れを指します。

「作成」は、文章や書類・計画を作るという意味を持つ単語です。絵画を生み出す際に用いられる「描く」は制作に属し、文章を作り言葉を紡ぐ際に使用される「書く」は作成に属すると考えれば分かりやすいでしょう。読み方は「さくせい」であり、作成の「成」には「物事を成し遂げる・仕上げる」という意味を持ちます。元は何もなかったところから、形のあるものを作り上げるという意味合いを含むのが「作成」の特徴です。見積書や業務報告書、予算案・計画書といったものから日記まで「書物・書類」が主な対象物となります。

なお「作成」には、従来の「作る」とは異なる文脈で用いられるケースがあります。保険業界における「作成」とは自己契約を指す言葉であり、顧客の名前を借りて契約を結ぶことです。生命保険の営業を行う職員が、保険料を自身で立て替えた上で契約は顧客の名前を使うことで成立します。

「制作」「作成」の使い方、使い分けは?

「制作」と「作成」を使い分けるには、作り出される対象物の差異や属性を見定めることが大切です。生み出される対象物が芸術作品であれば「制作」を、作り上げられるのが文書・書類であれば「作成」を使います。ただし芸術作品に関連していても、作られたものが書類であれば「作成」を用いなければなりません。展覧会に展示するための絵画を創造するときは「制作」ですが、画家へ手渡す日程表や開催概要をまとめるときは「作成」を用います。

また作品であるにもかかわらず、「制作」ではなく「製作」が使用されるケースもあります。映画やテレビ番組など、芸術性よりも娯楽性が高い作品を作る場合に用いるのは「製作」です。「製作」に使われている「製」は、「布を裁断し衣服を仕立てる」という意味合いを持つ漢字です。これが転じて「製作」には、道具・機械を使用して素材を加工しモノを作るという意味合いが生まれました。加えて芸術作品を作るための資金を調達する会社、宣伝・興業の全般を担う会社のことを「製作会社」と呼びます。これらの企業が芸術作品ではなく、資金調達により「制作をするための場」やチラシなど「宣伝のための物品」を作り出すからです。

一方で「作成」の対象となるモノについては文書・文章の他に、近年ホームページやソフトウェアといったシステムも含まれるようになりました。何もない時点からモノを作り上げる行為にスポットが当たっているのが「作成」であり、ソフトウェアのように直接的に手に触れることができないモノもその対象になるという訳です。同様に書籍を作るのであれば「作製・製本」に位置しますが、記述されている内容を作り出す場合は「作成」が用いられます。

「制作」「作成」の用例・例文

「制作」を文章に用いる際は、創作活動の種別を示す単語もしくは動詞「する」と組み合わせることが多いです。創作の種別の組み合わせの例としては映画制作やアニメーション制作、楽曲制作などが該当します。実際に文章に使う際は「ドキュメント番組制作に携わった」や、「ドラマの主題歌のための楽曲制作を担当する」といったように表現します。動詞「する」と組み合わせた例としては、「来年の個展に備えて絵画を制作する」といったような使い方が一般的です。

「作成」も同様に、動詞「する」と組み合わせて使用されることが多いです。文例を挙げると「店舗の宣伝と売上アップのためにホームページを作成する」、「今日中に議事録を作成して課長に提出しなければならない」といったように用います。また「彼はプロジェクト計画書作成のために徹夜した」などのように、対象物(名詞)と「作成」を組み合わせて使用されることもあります。