2022年1月25日火曜日

利用と使用の違い

「利用」と「使用」はどちらも「物や人の機能を生かして目的達成に役立てること」を意味する語です。そして、「利用」は「あるものの特性を生かして役立たせること」、「使用」は「あるものを役立てること」を指す意味で使われます。

「使用」はあくまでも、そのもの本来の役割が果たされる際に用いられます。たとえば、辞書を読んで単語の意味を調べるときは「辞書を使う」となります。しかし、「辞書の重さを利用してシワ伸ばしに使った」という場合なら「辞書を利用した」と表現できるでしょう。

「利用」「使用」の意味・読み方は?

そもそも、利用は「りよう」と読みます。利用には物や人を、ある状況にあてはめるという意味合いがあります。仮に物や人の目的と違っていたとしても、性質を状況にあてはめるのであれば「利用する」となるでしょう。なお、利用にはネガティブな意味合いが含まれることもあります。なぜなら、物や人の目的が違った場面で生かされることは、それらの意図に反しているケースもありえるからです。特に、「人が人を利用した」と書く場合、否定的な意味が強くなるといえます。

次に、使用は「しよう」と読みます。使用の意味合いは「物や人を、それぞれの領域で生かす」ということです。基本的に、物や人の能力、機能にそった形で使用は行われます。あるいは、その人の望みを叶えようと、役割を与えることも「使用する」と表現可能です。ただし、人に対して「使用する」という言葉を用いる際には注意が必要です。「使用人」という言葉があるように、「人が人を使う」ということは、そこに主従関係が生まれているからです。もしも両者が対等な関係であるならば、「使用」と表現するのはふさわしくないでしょう。

「利用」「使用」の使い方、使い分けは?

利用と使用を使い分ける際には、対象となる物や人の役割を踏まえなければなりません。本来の役割と異なる場面で対象物が用いられるなら「利用」が正しいといえます。逆に、本来の役割通りの用いられ方をするのであれば、「使用」が正しいでしょう。ただし、設備や建物の機能を目的のために役立てる際には、「利用する」とすることが一般的です。たとえば、娯楽施設に行ったり、アトラクションや遊具で遊んだりするときは「利用」があてはまります。

対象物が用いられたことにより、利益が発生したかどうかも重要です。「割引券を支払いのときに提示した」「携帯料金のプランを踏まえて、支払額が安くなるようにした」といった場合は、「自己の利益のために対象物を用いた」といえるでしょう。すなわち、「割引券を利用した」「料金プランを利用した」と書くことができます。ただし、「パソコンで文字入力した」「包丁で料理を作った」などという状況では、それらの行為自体が直接、利益につながっているわけではありません。そのため、「パソコンを使用した」「包丁を使用した」といった表現になります。

対象物が用いられた方法が、「単純かどうか」も大きなポイントです。利用は物や人の役割を応用して、目的達成に役立てるというニュアンスを含んでいます。つまり、何かが利用される際には、その方法が複雑になることも珍しくありません。例を挙げれば、「顕微鏡を利用して、日光を集めて、紙に火をつけて調理した」といった書き方になります。ここでは、顕微鏡を本来の役割とは別の状況で用いただけでなく、「調理」という大きな目的達成のために一部を担わせたとの意味が込められています。もしも顕微鏡を、小さなものを見るという単純な役割で用いたなら「顕微鏡を使った」という書き方で正しいでしょう。

そのほか、サービスや特典を用いる際には「利用」、道具や物体を用いる際には「使用」とするのが適切です。

「利用」「使用」の用例・例文

利益や打算が絡んだ文脈では、使用よりも利用を用いるのが適しています。「夏休みを利用して旅行した」「彼のリーダーシップは現場をまとめる際に利用できる」といった例文が挙げられるでしょう。なお、利用を含んだ言葉には「利用者」「利用価値」などがあります。いずれも、何らかの利益と関係している使われ方です。それぞれ、「ホテル利用者に向けてサービスを用意した」「どれほど傲慢な従業員でも、利用価値があるうちは解雇できない」といった文脈で用いられてきました。

シンプルに、物や人の機能を何かに用いるという場合は「使用」が的確です。「手袋を使用すれば、雪かきは楽だ」「明るい場所ではなかなか寝られないので、サングラスを使用した」といった例文が挙げられます。さらに、使用は「使用料金」「使用人」などにも含まれてきました。「使用料金を確認する」「使用人に言い渡す」といった表現で使われている言葉です。