2022年1月25日火曜日

尊敬語と謙譲語の違い

「尊敬語」と「謙譲語」は、どちらも「敬語」です。敬意を示したい対象(相手)も同じ場合もあります。しかし、「将軍が清水寺へいらっしゃる(いらっしゃるは「行く」の尊敬語)」と「将軍のもとに参る(参るは「行く」の謙譲語)」などと同じ敬語であっても使い分けられています。「尊敬語」と「敬語」には、どのような違いががあるのでしょうか。

「尊敬語」「謙譲語」の違い・概要

「尊敬語」と「謙譲語」はどちらも敬語です。敬意を表す対象(相手)の動作・行為を敬意を込めて表現するのが「尊敬語」です。それに対して、相手に対して敬意を表現するために自分の動作・行為をへりくだって表現するのが「謙譲語」です。つまり、「尊敬語」は敬いたい相手の動作・行為を表現する言葉です。それに対して「謙譲語」は自分の動作・行為をへりくだって表現する言葉です。そのことにより、相手に対する敬意を示す言葉なのです。

「尊敬語」「謙譲語」の意味・読み方は?

「尊敬語」の意味は、「話し手・書き手が動作・行為の主体者に対して敬意を持っていることを示すために使う言葉」です。また、「動作・行為の主体者」に対して「話し手・書き手」が実際には敬意を持っていなくても、「動作・行為の主体者」が、お金持ちである・会社の役員であるなど、社会的にみて敬意を払われるにあたいする立場にある時なども使用されます。また、揶揄的に使われる場合もあります。慇懃無礼な表現になります。また、「御」や「ご」や「貴」などを名詞につけて「尊敬語」を作る場合もあります。「尊敬語」は「そんけいご」と読みます。

いっぽう、「謙譲語」の意味は、「敬意を示したい対象(相手)に対し、動作・行為の主体者が自分の行為をへりくだって表現することにより、相手への敬意を示す言葉」です。また、「弊」「拙」などを名詞につけて「謙譲語」を作る場合もあります。こちらも、「尊敬語」と同じく揶揄的に使われる場合もあり、慇懃無礼な表現になります。「謙譲語」は、「けんじょうご」と読みます。

どちらも「敬語」であり、対象(相手)への敬意を表現する言葉です。「尊敬語」は敬意を示される側の動作・行為を表現する言葉であり、「謙譲語」は敬意を示したいという気持ちを持つ側の動作・行為を表現する言葉であるという点が大きく違う点なのです。

「尊敬語」「謙譲語」の使い方、使い分けは?

「尊敬語」は、「目上の者」や「社会的地位の高い者」の動作・行為について使われます。逆に言えば、「尊敬語」が使われている場合には、その動作の主体が「目上の者」や「社会的に地位の高い者であることが分かります。例えば、「教授がいらっしゃる」という表現があったとします。教授の「来る」という動作に関し、「いらっしゃる」という尊敬語が使われているわけです。このことにより、教授が敬意を示される立場にある人物であることがわかります。また、話し手または書き手は、教授に対して敬意を示していることが伝わります。「尊敬語」は、敬語ではない動詞に「お~なる」や「~(ら)れる」などをつけて作ることもできます。

「謙譲語」は、「目上の者」や「社会的地位の高い者」を前にして、話し手または書き手が、動作・行為をする者の行為をへりくだって表現する言葉です。話し手・書き手は自分自身であることもあります。動作・行為をへりくだって表現することにより対象(相手)を持ち上げるという形で敬意を示すのです。教授が呼び出されて、大学の学長のところへ来たとします。「学長、ただ今参りました」と教授は言うでしょう。教授は自分の「来る」という動作を「参る」という謙譲語で表現することにより、学長への敬意を表現したのです。

「尊敬語」は敬意を払う対象(相手)の動作・行為を表現する言葉、「謙譲語」は敬意を払う主体(自分)の動作を表現する言葉です。ですから、例えば「社長がうなぎをいただく」は誤用です。「いただく」は謙譲語ですので、敬意を払いたい対象である社長の「食べる」という動作をこの言葉で表現するのは誤りなのです。自分の行為を「いらっしゃる」と、尊敬語で表現してしまっているので、「昨日、私はデパートへいらっしゃった」も誤用となります。

「尊敬語」「謙譲語」の用例・例文

・「尊敬語」の用例
殿さまが寝ていらっしゃいます。
社長が結婚式においでになりました。
社長令嬢がお着物をお召しになりました。
社長がスープを召し上がりました。
社長がおっしゃる。
社長がお越しになる。
奥様はなんでもご存じだ。
社長令嬢がミレーの絵をご覧になる。
社長がカレーをお食べになりました。
奥様が指輪をお試しになりました。
大臣が椅子にお掛けになる。
王様は、指輪をお与えになりました。
貴行、御社、貴社、御宅

・「謙譲語」の用例
社長に「今日は暑いですよ」と申し上げました。
社長宅へ昨日参りました。
おいしいシュウマイをいただきました。
時間が遅くなりましたので、おいとまいたします。
お手紙を拝見いたしました。
そちらは寒いだろうと拝察いたします。
そのようなことは存知あげません。
素敵なお手紙をいただきました。
かしこまりました。すぐに対処いたします。
我が家で採れたみかんを差し上げます。
申し訳ありませんが、座らせていただきます。
弊行、弊社、弊紙、拙宅、小誌