2022年1月25日火曜日

振込と振替の違い

私たちが普段銀行などで利用している「振込」と「振替」。どちらも似たような言葉で取引の内容も似ていて混同しやすいですが、実は全く意味が違うため区別して覚えておくことが大切です。それでは「振込」と「振替」には、どのような違いがあるのでしょうか。普段からよく耳にしている「振込」と「振替」の違いについて、詳しくご紹介します。

「振込」「振替」の違い・概要

「振込」とは送金方法のひとつで、他人の金融機関や支店などの口座にお金を入れることをいいます。一方「振替」も「振込」と同じく送金方法のひとつですが、自分名義の同一銀行、同一支店にお金を入れることをいいます。「振込」と「振替」の違いは、送金する口座が「他人名義の口座」か「自分名義の口座か」の違いになります。

「振込」「振替」の意味・読み方は?

「振込」は、「ふりこみ」と読みます。
「振替」は、「ふりかえ」と読みます。

「振込」の意味は、口座などに金銭を送ることです。現金で振り込む場合は現金振込といい、金融機関口座から振り込む場合は口座振込といいます。他にもマージャンで他人の上がりパイを捨てること。また突然押しかけることという意味もあります。マージャン用語の「振込」は放銃ともいい、自分が捨てたパイで他人がロン(アガリ・勝利)されることです。つまりその局では自分の負けと点数の支払いを意味します。また突然押しかけるという意味では、昔遊女の元へ、なじみでもなく約束もない客が突然来ることとして使われていました。しかし現代では一般的に、金銭を口座に払い込むという意味で使われています。

一方「振替」の意味は、一時的にあるものを他のものと取り替えること。臨時に他のものを用いる、入れ替えるという意味です。また簿記などで、ある勘定を他の勘定に移すことという意味があります。現金収入を伴わない取引の仕訳のことをいいます。

「振込」「振替」の使い方、使い分けは?

「振込」と「振替」は、一般的にはどちらも送金のやり方のひとつで、他人名義の口座に金銭を送るのか自分名義の口座に金銭を送るのかという違いがあります。たとえば、AさんがATMなどからBさんの銀行口座にお金を送ることを「振込」といいます。言葉の使い方としては、「社員の口座に給与を振り込む」「先日Cさんに立て替えてもらった3万円を現金でCさんの口座に振り込む」などがあります。

一方「振替」は、自分名義の口座間のお金の移動のことです。たとえば自分名義の✕✕銀行の普通預金から、同じく自分名義の✕✕銀行の定期預金にお金を移動する場合「振替」といいます。使い方としては「普通預金から定期預金に自動振替の手続きをする」などです。また他のものと取り替えるという意味では、「祝日が日曜日だったので、翌月曜日を振替休日とします」「事故で電車が止まったので、バスで振替輸送を行います」などとして幅広く使われています。

「振込」「振替」の用例・例文

それでは「振込」と「振替」の違いがもう少しわかりやすいように、用例や例文を使ってご紹介します。

まずは「振込」の例文です。
・授業料を振り込む
・給与が銀行振込なので便利だ
・振込手数料を差し引いて入金します
・マージャンで勝つコツは振り込まないで満貫で勝負する
・マージャンで振り込んでも落ち込まない

「振込」の用例もみてみましょう、
・「・・・とその言葉通りに実に巧く振込みましたが、心中では気乗薄であったことも争えませんでした。」
幸田露伴 /「幻談」(青空文庫)
・「遊金あらば安い利足で丈夫な所へ振込(フリコン)で置がよい」
談義本「身体山吹色」(精選版 日本国語大辞典)
・「万燈を振込(フリコ)んで見りゃあ唯も帰れない」
樋口一葉/「たけくらべ」(青空文庫)
・「 亜矢子はさすがに面白くないと見えて、「葉ちゃんが飲むのは勝手だけど、飲みながらやると、振り込むぞ」といった。」
大岡昇平/「花影」(講談社文芸文庫)
・「『勇み勇んで』『振込むべいか』」
歌舞伎・暫(日本古典全書所収)

続いて「振替」の例文です
・給与振込口座から自動振替の手続きをするとスムーズに貯金ができて便利だ
・土曜日に運動会があったので今日は振替休日で学校は休みだ
・事故で電車が止まってしまったが、バスの振替輸送があったおかげで無事に帰宅できた
・公共料金やクレジットカード支払いを、口座から自動で引き落としてくれるサービスを口座振替という

「振替」の用例もみてみましょう。
・「斯う斯う云ふ訳ですから暫時百五十両丈けの御振替(フリカエ)を願ひます」
福沢諭吉/「福翁自伝」(青空文庫)
・「はじめのけしきを振り替へて、すがた、こと葉にはぢ、姫君をきたのかたとぞあがめける」
御伽草子/「ささやき竹」
・「・・・脱出せしめざる方向へ振り替えられていることが、関心事であろうと思う。」
宮本百合子/「イタリー芸術に在る一つの問題」(青空文庫)
・「・・・はなたれば、沙に金を振替へ、石に玉をあきなへるが如し。」
倉田百三/「学生と先哲」(青空文庫)
・「大蔵省の初の月給振替払いの日のことがのっていた。」
宮本百合子/「家庭と学生」(青空文庫)