2022年1月25日火曜日

昇進と昇格の違い

人や団体の立場が上になったとき、「昇進」「昇格」という言葉が使われてきました。ただし、昇進と昇格はおおまかに「地位が高まる」といった意味を持つものの、厳密な定義が異なります。それぞれの意味を把握し、間違えないようにしましょう。この記事では、昇進と昇格の意味や違い、使い分けのポイントなどを解説します。

「昇進」「昇格」の違い・概要

まず、昇進とは「出世する」「より上の肩書が与えられる」ことを意味します。たとえば、ある企業の中で、課長が部長になることは昇進です。昇進は同じ組織に在籍しながら、より上の役職を任せられることです。なお、反義語には「左遷」があります。昇進に対し、昇格は「能力が上がる」「上の段階へと進む」ことを意味します。昇格ではある組織から、別の組織に移るケースも少なくありません。スポーツのリーグ戦などで、下部から上に進むときに昇格と表現します。

「昇進」「昇格」の意味・読み方は?

昇進は「しょうしん」と読みます。主に、企業内で、役職が上がるときに使われてきた言葉です。そのため、「出世」と非常に意味が似ています。ただし、出世は「社会的地位が向上する」というニュアンスが含まれているのに対し、昇進は「組織内での立場が上になる」という意味を含んできました。つまり、ある会社で昇進したとしても、社会的な地位がそれほど変わらないことはありえるでしょう。なお、給料が上がることは「昇給」、資格のレベルが上がることは「昇級」「昇段」と呼びます。昇進しても、昇給や昇級が同時に行われるとは限りません。あくまでも、昇進は組織内で負う、役職や責任についての言葉です。

一方、昇格は「しょうかく」と読みます。昇格は所属していたカテゴリーやグレードから抜け出し、さらに上へと進むことです。「2部から1部」「初心者コースから経験者コース」などとレベルアップする場合には、昇格と呼ばれるでしょう。ちなみに、昇格と昇進は意味が似ているものの、正確には違う表現です。昇進はしたのに昇格が行われないことや、その逆のパターンもありえます。

「昇進」「昇格」の使い方、使い分けは?

昇進と昇格には「役職と等級」の違いがあります。昇進という言葉が使われるときには、ある役職に任命された状態を指します。組織内で出世し、肩書が変わることを昇進と呼びます。昇進した後は新しい役職名が与えられるので、周囲からの呼び名が変わるケースも少なくありません。「~係長」と呼ばれていた人が「~課長」と呼ばれ始めるのは、昇進後に起こる現象です。

それに対して、昇格は等級が変わることを指す言葉です。昇級や昇段などをまとめて、昇格と表現する場合も珍しくありません。昇格しても肩書が同じこともあるので、必ずしも本人の呼ばれ方が変わるとは限りません。たとえば、スポーツチームが2部から1部に昇格したとしても、チームに新しい肩書が加わるわけではないでしょう。以前と同じ呼ばれ方をするケースが大半です。そのかわり、将棋や囲碁のように、「名人」「竜王」といったタイトルを手にした場合には、昇格後に「~名人」と呼ばれます。

なお、企業によっては昇進と昇格で別々の基準が設けられています。そのため、それぞれの基準に照らし合わせて、昇進と昇格が使い分けられてきました。たとえば、役職が上になる場合は当然ながら昇進と呼ばれます。しかし、企業によっては役職とは別に、従業員の等級を設けています。もし昇進したとしても、従業員の等級が変わらなければ昇格とはいえません。上のポストが空いていたから自動的に昇進できたようなケースでは、昇格が行われないこともあります。その場合、昇進しても待遇が以前と変わらない可能性が高いのです。

そのほか、昇進は個人の変化を表す言葉であるのに対し、昇格は団体にも用いられます。スポーツチームや事業団体、教育機関などの等級が上がるときには昇格と呼ばれるでしょう。なぜなら、団体に役職が与えられることはほとんどないからです。役職についての表現である昇進は団体向けに相応しくなく、昇格が使われています。

「昇進」「昇格」の用例・例文

基本的に、昇進も昇格もポジティブで、「おめでたい」とされている言葉です。そのため、「昇進祝い」「昇格祈願」といった言い回しも生まれてきました。昇進も昇格も、強く願ってまで成し遂げたいことだといえます。例文としては、「昇進祝いに、家族が新しいネクタイを贈ってくれた」「昇格祈願のため、神社に参拝した」などが挙げられます。

なお、ビジネスシーンでは人の昇進や昇格を文章でお祝いすることが珍しくありません。その際は、「ご昇進」「ご昇格」といった丁寧語を用います。文章の場合、「ご昇進おめでとうございます」から始まる書き方で、簡潔に伝えるのが得策です。お祝いする相手は同僚や取引先など、さまざまです。以下、例文を記します。

「ご昇進おめでとうございます。先輩の努力が認められたこと、心よりうれしく思っています。これからより大きな責任を背負われ、たいへんだとは思いますが、くれぐれもお体には気をつけてくださいませ。」

「ご昇格おめでとうございます。~さまにご担当していただき、ひたむきなお仕事ぶりにいつも助けていただいてきました。このような形で報われたことを、弊社一同で喜んでおります。これからも弊社を、どうぞご贔屓にいただけますようよろしくお願いいたします。」