「歳」「才」の違い・概要
そもそも漢字の「歳」と「才」には、同じ意味があるわけではありません。例えば、「才色兼備」「才能」「鬼才」「天才」などのように、これらで使われている「才」には、「生まれつき備わっている能力や才能」といった意味があります。一方で、「歳」には、「歳を取る」「歳月」「歳入」などのように、時間の経過や年を表す意味があります。また、教科書では、「才」は小学校の教科書に、「歳」は中学校の教科書にそれぞれ掲載されています。「歳」「才」の意味・読み方は?
ここでは、「才」と「歳」の異なる意味や読み方について解説しましょう。まず、「才」の読み方ですが、一般的には音読みで「サイ」「ザイ」、訓読みで「ざえ」「かど」があります。「サイ」、あるいは古くは「ザイ」とも音読みされていた「才」ですが、「才知」や「才におぼれる」などの「持って生まれた素質、能力、才能」といった意味や、年齢を数えるときに用いる「才」といった俗語的表現としての意味があります。また、「角(かど)」と同語源を持つ「かど」は、性格や才能などのほか、見どころのある場所や目立つ所といった意味があります。「ざえ」は、漢学などの学問や教養、音楽などの才能を意味します。上記以外にも「才(サイ)」には、さまざまな意味があります。例えば、物流用語として使われる表現で、容積の単位として「1才」は1立方尺(1尺:約30.3cm)、木材の体積の単位として「1才」は長さ12尺(約3.6メートル)、織物の大きさを表す単位として「1才」は1平方フィート(約92cm2)といった意味もあります。
その一方で、「歳」には、読み方として、音読みで「サイ」「セイ」「セツ」「サ」、訓読みで「とし」「とせ」「よわい」があります。「歳(サイ)」の意味は、地球が太陽を一周する期間である一か年や年月を意味します。また、「二歳」や「三歳」など、年齢を数えるときにも用いられます。また、難読として「千歳(ちとせ)」がありますが、意味としては、千年、長い年月を指します。
「歳」「才」の使い方、使い分けは?
本来「才」には、「年齢」という意味がありません。また、「才」と「歳」は、もとの意味や成り立ちが異なるため、「才」は「歳」の略字でもありません。それにもかかわらず、年齢を書く際に「才」を用いることが多いのは、画数が多く難しい「〇歳(サイ)」に比べ、「〇才(サイ)」は手間がかからないからと言えるでしょう。そうした点から考えて、親しい人への手紙やメモ書きのようなものには、「歳」の代わりに「才」を使っても問題ないかもしれません。しかし、公文書や履歴書などの正式な文書には、手抜きした表現である「才」を使用するのは適切とは言えないでしょう。実際に、市町村などの自治体には、年齢を表す「サイ」は「歳」を使用すると、公文書作成の手引きに明記しているところもあります。学校教育で「歳」を学ぶのは中学校なので、中学生以上の大人であれば、正しい表現である「歳」を使用するのが無難かもしれません。「歳」を記入することが、時には面倒くさいと思うこともあるかもしれませんが、「歳」と「才」の使い分けについては、大人が正しく理解し、正しく書くように心がけましょう。しかし、その一方で、昭和36年3月17日に開催された第42回国語審議会総会に国語審議会第二部会が提出した「語形の『ゆれ』について」では、年齢を数える場合に、「歳」のかわりに「才」を使うことがかなり普通になっている点や、この傾向がさらに一般的傾向になると予測される点を挙げ、「才」の使用を一概にとがむべきではないとしています。実際に、多くの国語辞典や用語辞典、漢和辞典でも、「才」を「歳」の代用として示しているものが見られます。つまり、年齢を書く場合に限り、「才」を「歳」の代わりに用いることに対し、あまり神経質になる必要はないのかもしれません。