2022年1月25日火曜日

自動詞と他動詞の違い

簡単に言うと、自動詞は「自分だけで成立する動作」を表す動詞で、他動詞は「対象(他のもの)がないと成立しない動作」あるいは「対象(他のもの)になにかしらの影響を与える動作」です。

一見すると反対の意味をもつ自動詞と他動詞ですが、日常会話ではどちらを使っても同じ意味が伝わる場合があります。そのため両者の違いがわかりにくい、気にしたことがないという人も多くいます。しかし、自動詞と他動詞には簡単な見分け方があります。意味や用法が異なる両者ですが、文中での形でも区別が付く場合があります。

「自動詞」「他動詞」の意味・読み方は?

「自動詞」は「じどうし」、他動詞は「たどうし」と読みます。どちらも動詞の種類であり、すべての動詞は自動詞か他動詞のどちらかに分けられます。まず、動詞というのは品詞のひとつであり、物事の動作や作用、状態や存在などを表現します。「歩く」や「食べる」など、すべて「う」の音で終わるのが特徴です。

この中で自動詞は、他のものに影響を及ぼすことなく、主体の動作や変化を表す動詞で、対象がなくても成立します。上記の「歩く」は、自分の脚さえあればそれだけでできる動作なので、自動詞となります。「駅まで歩く」といった場合は、「歩く」にも「駅」という対象があるように思えますが、「歩く」という動作自体は駅がなくてもできます。

対して他動詞は、他のものに影響を及ぼす動詞であり、対象となるものがないと成り立ちません。上記の「食べる」は、口や歯や喉があっても、なにかしらの食べ物がないと成立しない動作です。そのため他動詞となります。「食べる」という動作の対象をパンだとすると、「パンを食べる」という文になって初めて他動詞が完結するのです。また、この時の「パン」は目的語という役割を果たします。

また、自動詞にも使役の助動詞を用いることで他動詞的な意味を持たせることができます。例えば、「歩く」に助動詞「せる」を付けると「歩かせる」という言葉になりますが、「歩かせる」は対象がいないと成立しません。このように、自動詞だからといっていつでも対象をもたないとは限りません。助動詞があれば、対象を必要とする単語になる可能性があります。

「自動詞」「他動詞」の使い方・使い分けは?

自動詞と他動詞の意味や用法は異なりますが、ある動詞を提示されて「これは自動詞か他動詞のどちらであるか」と聞かれても即答できない人は多いと思います。また、日常会話ではどちらを使っても意味が伝わることがあります。たとえば、皿を落としてしまった人がいるとします。その人が「皿が割れた」と言ったとしても、「皿を割った」と言ったとしても、意味は同じです。「割れる」という自動詞を使おうが、「割る」という他動詞を使おうが、似たようなことが伝わるのです。

しかし、自動詞と他動詞を混同してしまうと、誤った文法を使ってしまうことがあります。そのため、両者の区別を付けられるようになることが理想です。そこで、自動詞と他動詞の簡単な見分け方として、「を」の有無で判断する方法があります。

例外はありますが、「を」が直前に付いている動詞は他動詞であることが多いです。「パンを食べる」「手紙を書く」「瓦を割る」など、対象を表現する助詞の「を」があれば他動詞となります。しかしこの際、対象以外を表現する「を」には注意しなければなりません。たとえば、「公園を走る」の「を」は対象ではなく場所を表現しています。そのため、「走る」は自動詞です。

また、区別が難しい動詞として「さわる」があります。「さわる」は対象がないと成り立たないため他動詞かと思いがちですが、多くの辞書には自動詞と表記してあります。しかし他動詞と表記する辞書もあるようで、人によって解釈が異なる場合があるようです。ちなみに、「さわる」が強くなって「叩く」「掴む」「握る」となると他動詞になります。

「を」の有無ではなく、対象を必要とするかどうかという意味的な違いで判断する方法もありますが、その場合にも注意すべき動詞が存在します。それは「会う」です。「会う」は対象となる人がいないと成立しないように思いますが、自動詞です。「会う」は「友達と会う」という言い方をしますが、「と」は対象ではなく共同を意味します。そのため、対象がなくても成立する動詞なのです。

「自動詞」「他動詞」の用例・例文

まず、自動詞の例を以下に示します。

・公園を走る。
・大声で叫ぶ。
・ベッドで寝る。
・すっきりと目覚める。
・みんなで踊る。
・パソコンが寿命で壊れる。
・風が吹く。

次に、他動詞の例を以下に示します。
・ボールを投げる。
・本を読む。
・ビールを飲む。
・流行の歌を歌う。
・先生の話を聞く。
・息子を起こす。
・笛を吹く。