2022年1月25日火曜日

聴くと聞くの違い

「聴く」と「聞く」は、どちらも「耳で音を感じ取る」ことを意味する言葉です。このうち「聞く」は、「音を感じている」「音が耳に届く」さまを指し、基本的で意味の幅広い語彙です。「聞く」には「質問する」という意味もあります。そして「聴く」には「しっかり理解しようと努める」という意味合いまで含まれます。音が耳に届くので聞こえている、というだけでなく、音に意識を割いて聞こうとしている、耳を傾ける、という状況が「聴く」に該当します。

「聴く」「聞く」の意味・読み方は?

読み方は、「聴く」も「聞く」も「きく」です。まず、「聴く」は「傾聴」「広聴」といった言葉があるように、「じっくり話に耳を傾ける」とのニュアンスがあります。あるいは、流れてくる音に対し、理解や分析をしようとする行為です。そのため、「聴く」は音楽やラジオなどに対して使われてきました。その場合、「音楽を聴く」「ラジオを聴く」といった書き方がなされます。さらに、「聴く」は「意識的に情報を集めようとする」との意味もあります。授業やスピーチに反応し、情報を得ようとする行為は「聴く」とするのがふさわしいでしょう。

「聴く」に比べると、「聞く」には「なんとなく音が入ってくる」というニュアンスが含まれます。このとき、本人が意識しているかは関係ありません。むしろ、意識していないのに音を感じ取っている状態を「聞く」と表現します。なお、「聞く」には「情報が自然と入ってくる」との意味もあります。「伝え聞く」「人から聞く」といった使い方は、こちらの意味だといえるでしょう。そのほか、「聞きたがり」「なんでも聞く」といったように、「分からないことを教えてくれるように願う」という場合にも「聞く」が使われてきました。

「聴く」「聞く」の使い方、使い分けは?

まずは、耳に入ってくる「音の種類」によって、「聴く」と「聞く」は使い分け可能です。たとえば、流れているのが音楽やCD、誰かのスピーチだとすれば、本人は意識的に耳を傾けているといえます。この場合は、「聴く」とするのが適切です。一方で、環境音や話相手の声は、特に意識をしなくても耳に入ってくるでしょう。こうしたケースは「聞く」と表現できます。ちなみに、「すでに教えてもらって知っている」という意味でも、「聞いた」という言い回しが使われます。「その話は聞いた」といえば、「もう知っている」と同義です。

次に、本人が「どのような状況で音を感じているか」も重要な使い分けのポイントでしょう。コンサートや授業、講演会などでは、誰もが音に対して集中しているはずです。あるいは、自分の意思でかけた音楽、つけたテレビなどにも、じっと耳を傾けるでしょう。こうした状況では、「聴く」という言葉が使われてきました。ただ、誰かと話しているだけでは、本人が集中しているとは限りません。特に労力を使わず、話や音を感じ取っている状況では「聞く」が使われます。そのかわり、音に対して「もっとよく理解しよう」と集中したら、「聞く」は「聴く」に変わります。

コミュニケーションにおいても、「聴く」と「聞く」は違う行為だとみなされてきました。たとえば、ある人と会話をするとき、どちらかが話を「聞く」ことから始めることが一般的です。これは、「相手の情報を教えてもらう」という意味です。聞かれた側が話し始め、聞いた側は「聴く」ことを意識します。つまり、「情報を理解しようと集中する」状態です。ちなみに、自分の話を押さえて、相手の話を引き出す行為は「聞く」と表現されます。コミュニケーション能力が高い人ほど、「聴く」と「聞く」の使い分けが上手です。

「聴く」「聞く」の用例・例文

まず、「聴く」の用例には以下のようなものがあります。

「大好きなバンドの新譜が出ていた。さっそく買って家で聴いた」
「あの教授の講演を聴いていて、たくさんの発見があった」
「最近、暗い気持ちになっていたので気晴らしに落語を聴きに行った」

基本的には、「鑑賞する」「じっと耳をすます」といった場合に「聴く」を使うのが適切です。そのほか、「情報を収集する」という意味で、

「証人の話を聴き、弁護士は考え込んだ」

といった使い方もされてきました。

次に、「聞く」の用例を挙げていきます。

「人から聞いた話だが、彼は昨日失恋したらしい」
「祭りばやしが聞こえてきて、真夏の風情を感じた」
「うるさいなあ。そんなに大きな声を出さなくてもちゃんと聞こえてるよ」

努力をしなくても、「音が耳に入ってくる」という場合には、「聞く」を使いましょう。さらに、「質問をする」という意味では、

「どうやってセルフレジを操作するのか分からず、店員に聞いてみた」

といった使い方ができます。