「戦略」「戦術」の違い・概要
まず、戦略とは、ある結果を目指し、物事を組織的に動かしていくための方針、原則などを指します。戦略は大局的な概念であり、組織が共通して認識しておかなくてはならない決まり事です。それに対して、戦術はより具体的に示される業務や作戦の内容です。戦略よりも戦術のほうが局地的で、専門的になることが少なくありません。一般的には、戦術の上にある概念が戦略だとされています。組織を動かすには、戦略を固めたうえで戦術に落とし込む必要があります。「戦略」「戦術」の意味・読み方は?
戦略は「せんりゃく」と読みます。組織が成長したり、目的を達成したりするうえで、指針となるものが戦略です。目標から逆算して決められるのが戦略であり、組織のメンバーに戦略は共有されなくてはなりません。メンバーが「何を優先して動くべきか」「無駄なものは何か」を把握するために戦略は用いられます。戦略は長期的に守られるべき原則であり、そこから逸脱する者が多いと組織は停滞しかねません。だからこそ、組織のリーダーは戦略が守られるように、「戦術」を設定する必要があります。戦術は「せんじゅつ」と読みます。戦略を土台として、より実行しやすい細かいルールへと落とし込んだものが戦術です。たとえば、サッカーの試合において監督が「守備を重視して勝利しよう」と言うのは戦略の伝達です。ただ、それだけでは選手がイメージを持てません。そこで、「相手のエースにマークをつける」「1人だけ前線に残して後は自陣で守る」と詳しい作戦を伝えることが必須です。これらが戦術です。戦術は戦略につながる概念であり、最終的に組織の利益を目指すという点で共通しています。
「戦略」「戦術」の使い方、使い分けは?
もともと戦略や戦術は軍事用語でした。敵軍と戦闘を行う際に、司令部は作戦会議で戦略を設定していました。しかし、戦略だけ決めても、現場の兵士はどう動けばいいのか分かりません。部隊や階級によって役割が異なるので、戦略だけがあっても任務を理解しにくかったからです。そこで、小さな部隊や個人が具体的に動けるよう、戦術が伝えられるようになりました。いうなれば、「相手の基地を占拠して、補給経路を絶つ」という大きな原則が戦略です。そこから「そのためには歩兵部隊が陽動作戦を実行しなければならない」と、細かく出される指示が戦術です。強力な軍隊は、戦略と戦術の両方がともなっていたといえます。やがて、戦略と戦術はほかの分野にも使われるようになりました。スポーツやゲーム、格闘技など、勝敗のつく試合においては、日常的に戦略や戦術という言葉は用いられています。勝利への筋道を考えるうえで、戦略や戦術は非常に重要なポイントだったからです。特に、サッカーやラグビー、野球などの団体競技では高度に戦略と戦術が進化し、魅力の底上げにつながっています。戦術が進化したことでビッグクラブチームと地方クラブの差が埋まり、競技の面白さが増したとする意見もあります。
勝敗以外のシチュエーションでも、戦略や戦術を用いることは珍しくありません。代表例として、ビジネスシーンが挙げられます。ビジネスは勝敗がつくような世界ではないものの、ライバルが多い過酷な状況を、戦いに重ねて考えることがあります。このようなとき、経営陣が設定している長期的なビジョンを戦略と呼んできました。そして、ビジョンを従業員に伝えようと、具体的なタスクにして示したものが戦術です。もはや戦略や戦術はビジネス用語の一部であり、「企業戦略」「マーケティング戦術」といった言葉も使われるようになっています。優秀な経営者を「戦略家」「戦術家」と表現することもあります。
「戦略」「戦術」の用例・例文
使い方としては、「戦略を練る」「戦術を組み立てる」といった文脈となります。戦略も戦術もルールや作戦の一種なので、「誰かが考案し、伝えるもの」として用いられてきました。なお、それぞれが必要とされている業界、ジャンルと組み合わせた言葉も多数派生しています。たとえば、「広告戦略」「ポゼッション戦術」などの用法です。戦略も戦術もシチュエーションを問わず、さまざまな機会で使われている言葉になったといえるでしょう。戦略を用いた例文として、「戦略的な経営ができていないと、企業成長は望めない」といったものが挙げられます。同様に、「戦術的」という言葉もあり、スポーツやゲーム、ビジネスなど、幅広い場面で応用が可能です。戦術を用いた文章例として、「戦術面では優れているが、実行できる人材がいない」「プロモーション戦術を実行する」などがあります。なお、大局的な視点や信念が、その場限りの作戦に負けることを「戦略が戦術に負ける」とも表現します。