「手配」の敬語表現
「手配」とは、物事を進めるにあたって、あらかじめ役割や段取りを決めて準備することをいいます。また、指令を出して人員を要所に配置するという意味も持ち、「犯人の指名手配」などと用いられることもあります。名詞の「手配」を敬語で表現する場合は、接頭語の「お」「ご」をつけ「お手配」「ご手配」などとします。「お手配」「ご手配」は、立てるべき人が手配してくれたのであれば尊敬語、立てるべき人に手配をしてあげたのであれば謙譲語となります。また、立てる立てられるの関係性がなく、単に「手配」を美化して述べるのであれば、丁寧語の一つである美化語に分類することができます。「手配」の敬語の最上級の表現
「手配」を最上級の敬語で表現する場合は、まず前提として尊敬表現、謙譲表現のどちらがよりふさわしいのかを考える必要があります。そもそも「手配」という言葉は、物事を進めるうえでしっかり段取りを行うという、能力や才能の有為性を示す意味を含んでいますので、自分ではなく、相手の行為に用いるのが適当でしょう。ここで相手の行為に尊敬語を使って「お手配になる」「ご手配なさる」などとすることもできますが、手配したことによって他に利益をもたらす供与性を盛り込めば、手配するという行為の価値をよりいっそう高めることができます。すなわち手配をしてくれたのは相手で、自分は手配をしてもらったという関係性です。この場合、相手を立てて自分を低める謙譲表現を用います。そして謙譲表現の一般形を使って「お手配いただく」「ご手配いただく」としたうえで、「いただく」をさらに丁寧にした「賜る」に言い換え、丁寧語の「ます」も加えて「お手配賜ります」「ご手配賜ります」という言い方にすれば、これが「手配」の最上級の敬語表現となります。
「手配」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
一般的なビジネスシーンでは、「手配」の敬語として「お手配」「ご手配」が使われます。この言葉が用いられるメールや手紙には依頼の内容も多く見られますが、ストレート過ぎる表現は受け取り手に圧迫感を与えますので、伝え方に工夫が必要です。使用例としては「お手数をおかけしますが、至急ご手配いただきますようお願い申し上げます」「ご手配のほど、なにとぞよろしくお願いいたします」「弊社への納品につきましては下記の期日までにご手配いただけますと幸いでございます」などがあげられます。「お手数」「なにとぞ」「幸い」などの言葉をクッションとして、表現を和らげて伝えている点がポイントです。「手配」を上司に伝える際の敬語表現
「手配」は、依頼、報告、御礼など様々なビジネスシーンで用いられやすい言葉です。目上である上司に伝える際にも、適切な敬語を用いて使用しなくてはなりません。「手配」を「お手配」「ご手配」などに言い換えて用いるのは当然ですが、たとえ言い換えたとしても「課長、例の件早くご手配してください」という言い方をしてしまっては、上司に対して失礼な表現になってしまうという点に注意が必要です。「ご手配してください」という文章は、「くれる」の尊敬語「くださる」を含んでおり、敬語の表現としては問題ないのですが、「ください」が活用の命令形となっていることから、敬語表現としていくら正しくても、上司に対して使用するには不適切な言い方になってしまうのです。ですからここは「してください」を使うのではなく、「お願いします」などと相手を立てる表現を用いて「例の件、早めにご手配をお願いします」などとしなくてはなりません。
また、自分の手配が終わったことを上司に報告するケースもよくみられます。この場合「例の件なら、もう手配済みです」というような言い方も、丁寧語の「です」によって敬語表現自体は成立してはいますが、「手配」という言葉が行為の有為性を含んでいるために、鼻持ちならない表現だとも捉えられかねません。ここは「手配」を「準備」などに言い換えて「例の件なら、準備完了しています」などとするのが無難でしょう。
「手配」の敬語での誤用表現・注意事項
「手配」を敬語にした際は、「お手配」「ご手配」のどちらを使っても構わないというルールがあります。とはいえ、使い分けに何か基準があれば迷わなくても済むでしょう。一般的に、訓読みする和語の場合は「お」、音読みする漢語の場合は「ご」をつけることになっています。「手紙」は「お手紙」、「活躍」は「ご活躍」とするような使い方です。しかし「手配」は訓読み+音読みでこの決まりに収まらないことから「お手配」「ご手配」両方の言い方が慣例的に認められているというわけです。ただし、使い分けには一定の傾向が見られます。それは相手の行為を言う場合は「ご」を、自分が行為の主体であれば「お」を付けるというものです。「ご手配いただきありがとうございました」といえば相手の行為、「こちらでお手配しております」であれば自分の行為といったような使い分けのしかたです。自分が主体の行為には敬意の度合いが比較的低い美化語の「お」を付けて区別する、という捉え方もありますが、両者の使い分けに必ずしも固定した法則があるわけではありません。