「ありがたいです」の敬語表現
「ありがたいです」は形容詞の「ありがたい」に、断定の意味のある助動詞「だ、である」の丁寧表現「です」がついた丁寧語です。 「ありがたい」には、「人の行為に感謝する様」「好都合を喜ぶ様」「尊い」などの意味があります。「ありがたいです」は、これらのことを丁寧に相手に伝える言葉です。「ありがたいです」の敬語の最上級の表現
敬語の最上級の表現は、最高敬語という尊敬語です。最高敬語は天皇や皇族、王や王族に対してのみ使うことができます。「ありがたいです」は丁寧語なので、最高敬語はありません。丁寧語は、人ではなく場や聞き手、読み手に配慮して使います。フォーマルな場所なら人や場所、ものなどすべてに対して使えるので、「ありがたいです」が最上級の形だと考えられます。しかしフォーマルな場で特定の人に対して感謝の意を伝える場合は、「ありがたく存じます」などの謙譲語を使うのが一般的です。「ありがたく存じます」は、「ありがたいです」の上級表現ではありません。形容詞「ありがたい」の連用形「ありがたく」に動詞「思う」の謙譲語「存じる」の連用形「存じ」がつき、丁寧を表す助動詞「ます」が続く形です。 謙譲語の「存じる」は、そのままの形では現在の日本語では使うことができません。必ず丁寧を表す助動詞の「ます」をつけて丁寧体で使います。
最高敬語は尊敬語ですから、謙譲語には最高敬語はありません。最高敬語がない場合は、わざと1つの言葉に同種の敬語を重ねた二重敬語で敬意を表します。「ありがたく存じます」の場合も、二重敬語が最上級の表現です。従って「ありがたく存じます」の最上級の表現は「ありがたく存じ奉る」です。構造は形容詞「ありがたい」の連用形「ありがたく」に「思う」の謙譲語「存じる」の連用形「存じ」がつき、動詞の連用形について謙譲の意を添える補助動詞「奉る」が重なった形になります。
「ありがたいです」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
「ありがたいです」は丁寧語なので、そのままの形でビジネスメールや手紙に使うことができます。社内メールや気の置けない間柄なら「都合がつかなくなったので、待ち合わせの時間を3時に変更していただけるとありがたいです」などといった形で使います。しかし得意先など改まった関係では、「ありがたいです」は不向きだという考え方もあります。 先に述べた通り特定の人に対して感謝の意を伝えるという意図がある場合は、謙譲表現になる「ありがたく存じます」などが適切です。「日頃のご愛顧、ありがたく存じます」「的を射たご意見、ありがたく存じます」などのように使います。「ありがたいです」を上司に伝える際の敬語表現
上司に「ありがたいです」を伝える際も、基本的にはメールや手紙と同じように「ありがたいです」を使うことができます。「私の担当する仕事に、人員を割いていただいてありがたいです」などのように使います。他の部署など改まった関係性の上司なら「ありがたく存じます」を使って、「他部署にもかかわらず、お気遣いいただきありがたく存じます」といった使い方が可能です。「ありがたいです」の敬語での誤用表現・注意事項
「ありがたいです」は、文法的には誤用です。助動詞の「です」は、名詞と助詞の「の」のあとにしかつけることができません。形容詞の「ありがたい」に「です」の普通体「だ」をつけてみると、「ありがたいだ」となり日本語として不自然であることがわかります。しかし現在は平明で簡素な敬語にしようという国の方針から、形容詞に「です」のついた形も正しいとされています。形容詞が述語になっている文を、形容詞述語文と言います。形容詞述語文の場合は、「ありがたいです」はイ形容詞述語文になります。イ形容詞とは名詞について修飾する際、語尾が「い」になる形容詞です。 イ形容詞述語には、特別丁寧体があります。特別丁寧体は助動詞「です」の代わりに、補助動詞「ある」の丁寧語「ございます」がついた形です。「ありがたいです」の場合は「ありがたい」の連用形「ありがたく」に「ございます」がついて「ありがとう」とウ音便に変化した「ありがとうございます」になります。特別丁寧体は「ありがたいです」をさらに丁寧に言うことができますが、「ありがたいです」の上級表現ではありません。
特別丁寧体は現在、非常に改まった場などでしか使われなくなっています。しかし「ありがたい」の特別丁寧体の「ありがとうございます」はイントネーションが変化して感動詞になり、慣用表現として定着しています。そのため、「常々、弊社をお引き立ていただきありがとうございます」という使い方ができます。