「伝える」の敬語表現
言葉を使い相手に知らせるという意味のある「伝える」の丁寧語は、語尾に助動詞「ます」を付けて「伝えます」と表します。丁寧語である「伝えます」は、相手と自分との関係性などを考慮することなくあらゆる場面で使用可能です。一方「伝える」の尊敬語は、動詞を受身形に変えて「伝えられる」と表現します。こうすることで、目上の人の「伝える」という行為に敬意を表せます。そのため尊敬語「伝えられる」は、自分が伝える立場の場合には使用できません。また、「伝える」は「言う」の謙譲語にあたる「申す」を付けて「申し伝える」と表現すれば謙譲語になります。他にも謙譲の意味がある「お」を付けて「お伝えする」と表す場合も、「伝える」の謙譲語です。
「伝える」の敬語の最上級の表現
「伝える」の尊敬語は「伝えられる」ですが、実はこれよりもさらに相手への敬意を表せる尊敬語もあります。「伝える」に尊敬の意味を含む「お」を付けて「お伝え」という名詞の形にし、さらに助詞「に」と動詞の「なる」を接続して、「お伝えになる」と表します。これが、「伝える」の最上級の尊敬語です。「伝える」の謙譲語「お伝えする」にも、より敬意を表すことのできる謙譲語があります。「お伝えする」の「する」を謙譲語「いたす」に変換し「お伝えいたす」と表現すると、「伝える」の最上級の謙譲語となるのです。基本的に丁寧語を使って「お伝えいたします」と表現します。さらに「言う」の謙譲語「申し上げる」を使い「お伝え申し上げる」とした場合も、「伝える」の最上級の謙譲表現です。
「伝える」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
「伝える」をビジネスメールや手紙で使う場合、謙譲語にする場面が多いでしょう。特にメールの相手から自分の社内の人に、何か伝言を頼まれた際の返事としてよく使われます。例えば取引先とのメールで、「こちらの件につきましては弊社の営業担当Aに申し伝えます」と表現することがあるでしょう。この例文では、取引先に敬意を表すために謙譲語「申し伝える」を使用しています。他にも取引先とのメールで、「打ち合わせの件については責任者に申し伝えます」という使い方をする場合もあります。この場合、責任者が自分の上司であっても敬意を表すのは取引先であるため、「申し伝える」を使います。取引先とのメールでは、例え上司であっても社内の人間に対しては敬語表現を使う必要はありません。「伝える」を上司に伝える際の敬語表現
「伝える」を上司との会話で使用する場合、謙譲語と尊敬語の両方を使う場面があるでしょう。例えば上司に対して、自分が取引先に伝えておくという旨を敬語表現を用いて言いたいとします。この場合「打ち合わせの件は私が取引先にお伝えします」といったように、「伝える」の謙譲語「お伝えする」を使いましょう。この表現では敬意を表す先は上司ではなく、取引先になるのです。「納期変更については私が取引先にお伝えいたします」というように、「伝える」の最上級の謙譲表現「お伝えいたす」を使えばより丁寧な印象になります。また、上司が何かを伝えるということを表現したい場面もあるでしょう。そのような場合は、「出張の件はAさんにお伝えになりましたか」といったように、「伝える」の尊敬語「お伝えになる」を使います。「取引先にお伝えになりましたか」のように伝える先が取引先であっても、この場合敬意を表すのは上司に対してなので尊敬語を使います。
「伝える」の敬語での誤用表現・注意事項
「伝える」の尊敬語は「伝えられる」ですが、この表現を使う際には注意が必要となります。それは「〜られる」を付けると、受身や可能といった意味になる場合もあるからです。例えば「母親にこうするように伝えられた」と表すと受身の表現になります。「ずっと思っていたことを伝えられた」と言えば、可能の意味を含む表現になるのです。そのため「伝える」を尊敬語にしたい場合は、「お伝えになる」を使用した方が無難でしょう。また、同じ謙譲語でも「申し伝える」と「お伝えする」は使う場面が違うので、その点にも注意が必要です。「申し伝える」はメール相手や話相手などの聞き手に敬意を表す謙譲語で、伝える先に敬意を表しているわけではありません。一方「お伝えする」は行為がおよぶ先、つまり伝える相手に対して敬意を表す謙譲語です。例えば取引先とのメールでは、「上司にお伝えします」といったような使い方はできないので注意しましょう。この場合メールの相手である取引先に敬意を示す必要があるため、「上司に申し伝えます」と表現するのが適切です。